乳青色の湯が階段状の岩棚を流れ落ちる、イタリア・トスカーナ州のサトゥルニア温泉

イタリアの温泉「テルメ」とは?日本との違いと世界遺産・秘境の温泉地を紹介

トスカーナ州の天然温泉テルメ・ディ・サトゥルニアの石灰棚
水着で楽しむイタリアの天然温泉(テルメ・ディ・サトゥルニア)

イタリアには温泉がある、というのが一般的なイメージとして定着したのは、やはりあの映画のおかげでしょうか。
皆さん、ご存知の『テルマエ・ロマエ』。これが大ヒットしたこともあり、温泉というものが日本の文化というだけではなく、イタリアにも古くから根付いた文化であることが広く周知されたのではないかと思います。

イタリアのテルメ(温泉)文化とは

似ているのは温泉だけじゃない?イタリアと日本の共通点

この温泉を一つ取り上げても、実はイタリアと日本というのは、非常に似ている部分が多いように感じます。
例えば、その地域によって料理の味付けや使われる食材が異なったり、それぞれの地に根付いた郷土料理があったり、言語も日本でしか日本語は話されませんし、イタリア語もイタリアでしか話されないという独自の言語があり、さらには地域ごとに方言があったりするところも同じです。
ちょっと番外編ですが、個人的には、電話の切り方もとても似ていると思っています。(笑)
「Grazie!!Ciao, ciao」と最後まで何度も挨拶するイタリア人。日本人も「はいはーい、うん、またねー。」とすぐにガチャンとは切りませんよね。これ、欧米では「Ok, bye」ガチャン。なので、こういう去り際の名残惜しさ、みたいな感じ方も似ているのかな、なんて思ったりしています。

火山国という共通点から生まれた温泉文化

と、ちょっと話は逸れましたが、まだまだ両国の共通点は挙げられると思いますし、そもそも、国そのものの地理的なものも似ていますよね。イタリアと日本は、北から南にかけて細長く、周りを海に囲まれている、そして、四季がとてもはっきりとしている、ということも共通しています。その地理的な共通点が根幹となって、各地の料理の違いだったり、その地の気候に沿った食材を使った郷土料理があったり、各地の言葉が異なったり、というところが似ている部分なのかもしれません。そして、その共通点の中に、火山国である、ということもあって、「温泉が湧く」というところも同じなのですね。
それゆえか、私たちはイタリアに行くと、なんだか落ち着く、居心地が良いと感じ、どんどんとその魅力にどっぷりと浸かっていたくなるのかもしれません。

 

イタリアの温泉は「治療」のため|保険が効く温泉療養

日本で温泉に入るのは、リラックスするためというのはもちろんですが、「温泉の効能」を期待して各地の温泉を巡ることもありますよね。これはイタリアも同じ。ただ、どちらかというと“治療”というイメージが強めです。なんと、条件を満たせば保険まで効くのです。
日本では、リウマチや腰痛に効く、美肌効果がある、冷え性改善に良い、など期待される効果が温泉の説明として表記されていたりしますが、イタリアでは腎臓疾患や気管支炎など、病気に対する効果が具体的で、場所によっては、専属の医師が常駐する温泉療養施設になっているところもあります。医師の処方があり、対象となる疾患や施設などの条件を満たした場合に公的医療制度が適用される、という仕組みです。

 

イタリアと日本の温泉の違い

イタリアと日本の温泉文化は共通していますが、その中にも「違い」もあります。ここからは、日本の温泉との違いをお伝えしていきたいと思います。

水着着用・男女混浴が基本

雪山を望むイタリアの露天テルメ|水着着用で男女一緒に楽しむ温泉
水着で男女一緒に楽しむのがイタリア流。雪景色の中の露天テルメ

イタリアで温泉に入ったことがある方はご存知かと思いますが、イタリアの温泉に入る際には、まず水着が必要です。プールみたい!と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、その通りで、男女混浴なのです。ビーチサンダルまで必要なところもあったり…。まずは、ここがちょっと驚くところですが、これはイタリア人にとっても同じこと。イタリア人が日本に来て温泉に行こうと思ったら、え?水着いらないの?そして、カップルが一緒に温泉に入ろうと思ったら、入り口でいきなり男女が分かれるの?!なんて驚くポイントだったりします。

体を洗う場所がない|「温まる」ためのテルメ

そして、イタリアのテルメは「温まる」というところが主な目的。そのため、身体を洗うところがありません。日本人にとっては、身体を洗ってから温泉にはいるもの、といういわゆる温泉マナーが染みついているので、これもちょっと驚くところかもしれませんね。でも、確かに、先にお伝えした、イタリアは水着着用で温泉に入る、という時点で、日本で言う「お風呂に入る」というイメージとは異なりますよね。

お湯の温度は36度前後とぬるめ

温まるのが目的ではあるのですが、もう一つ違うところは、お湯の温度が低めです。ちょっとぬるい、と感じる日本人の方が多いようです。およそ日本の温泉は40度かそれよりちょっと熱いぐらいかと思いますが、イタリアでは36度前後。そのため、ゆっくりと温めていく、という入浴方法になります。
逆にイタリア人が日本の温泉に浸かると、こんな熱いお湯入っていられない!とすぐ出てしまったりするようですが、そもそもイタリアの家には基本的にバスタブがなく、日々習慣的にお湯に浸かっているかというとそうではないので、そういった点でも熱いお湯は苦手なのかもしれませんね。

自然湧出の温泉は基本的に無料

そして、最後にイタリアの温泉は基本的には無料です。日本でも無料のところはありますが、入湯料として支払うところがほとんどですよね。イタリアで支払いが必要なところは、先の治療を専門とする温泉療養施設やリラックススパなどです。

 

世界遺産に登録された温泉地モンテカティーニ・テルメ

世界遺産モンテカティーニ・テルメの温泉施設の列柱回廊
優雅な列柱に囲まれたモンテカティーニ・テルメの温泉施設

2021年7月、ユネスコ会議にて新たに33の世界遺産登録が決定しましたが、そのうち3つがイタリアから選ばれました。これでイタリアの世界遺産は当時で合計58か所、これは世界トップの世界遺産の数を誇ります。その後も登録は増え続け、2026年8月時点では62か所(文化遺産56件、自然遺産6件)と、変わらず世界最多の座を守っています。今回登録された世界遺産の一つに、なんとイタリアの温泉地が選ばれているのです!
それが、モンテカティーニ・テルメ。トスカーナ州にあり、今回世界遺産になったのは、単独での登録ではなく、イギリスやチェコ、ドイツなどにあるヨーロッパ7か国11の温泉地と共同登録ではありますが、人類の価値、医学の発展、水浴療との交流をあらわした偉大なヨーロッパの温泉地として選ばれました。

古代ローマから続く歴史とアクセス

モンテカティーニ・テルメは、フィレンツェから電車で約50分、ピサからは約40分。観光でも行きやすいのでお勧めの温泉地です。この温泉は古代ローマ時代から知られているほど古くから存在する温泉地で、1773年から1783年にかけてトスカーナ大公ピエトロ・レオポルド1世が温泉施設の建設を命じ、その後保養地として発展していきました。

 

イタリアに根付く飲泉文化|温泉は「飲むもの」

もう一つ、モンテカティーニ・テルメは、一般的な入浴する温泉と併せて、医師の指導のもと、症状に応じた飲泉ができます。

イタリアの温泉地を水源とするミネラルウォーター、サンペレグリノ
温泉地サン・ペレグリノ・テルメを水源とするサンペレグリノ

実は、イタリア人にとって温泉は飲むものというイメージも強く、飲泉文化も強く根付いています。皆さんもよくご存知のミネラルウォーター、サンペレグリノ。これもSan Pellegrino Terme(サン ペレグリノ テルメ)というイタリアの有名な温泉地が水源です。
その飲む温泉水の中でも、このモンテカティーニ・テルメの温泉は特に消化器系、食道炎、コレステロール低下、脂肪減少などに効果があるそうで、蛇口から出る温泉をグラスで飲みます。

 

秘境の絶景温泉テルメ・ディ・サトゥルニア

テルメ・ディ・サトゥルニアの全景と古い水車小屋(トスカーナ州)
古い水車小屋の脇を流れ落ちる「ムリーノの滝」

その他、大自然を感じながら温泉を楽しみたい!という方には、写真にある「テルメ・ディ・サトゥルニア」がお勧めです。トスカーナ州シエナより南に位置し、大自然というだけあって山中にあるので、電車は通っておらず、バスの行き方も複雑なので、レンタカーで行くのが良いですね。

段々畑のように連なる天然の露天風呂

湯気の立ちのぼるサトゥルニアの石灰棚の天然温泉
湯気の立ちのぼる石灰棚で、思い思いに湯浴みを楽しむ人々

写真のように段々畑のように重なり、温泉が湧き出ています。日本で“秘境の温泉地”に行くような感覚で、イタリアに行かれた際にはこの大自然の温泉地を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
日本人から深く愛される温泉。これがイタリアでも同じように愛され、そして「健康に良い」というものとして定着しているのは、何とも不思議に感じます。
そして、イタリアという地の奥深くから湧き出た温泉に浸かっていると、身体の芯までその文化に浸かったような気分になり、もっとイタリアのことが好きになるかもしれませんね。

 

イタリアの余韻を、食卓へ

温泉でゆっくりと体を温めたあとに待っているのは、その土地ならではの食事。テルメ巡りの旅も、結局はその地の味とセットで記憶に残るものです。イタリアの旅に思いを馳せながら、ご家庭でもイタリアの奥行きに触れてみてください。
イタリア食材ベリッシモでは、トスカーナをはじめ各地の風土と作り手の想いが感じられる品をご紹介しています。