Mail Magazine 26 Agosto 2020

トスカーナおらが村便り| Mail Magazine 26 Agosto 2020

イタリアでは、子供の夏休みは3か月(!)。職業にもよりますが、大人も2週間程度の夏休みをしっかりととります。我が家のメインバカンスは8月の末からなのですが、日本帰省ができなかった今年は、6、7月は週末絡めて3~4泊、8月は1週間、主人母方の田舎に滞在してきました。少し前のメルマガにも登場した、トスカーナ南部・オルチャ渓谷にあるヴィーヴォ・ドルチャです。今年はコロナの影響で、「バカンスも国内で済ます人がほとんど」、また「メジャーな観光地よりも小さな村や山などに滞在する人が多い」、といろんなニュースで見かけましたが、まさにそんな場所がばーちゃん村。こんなににぎわってるのを見るのはいつぶり?というほど、私たちのような里帰り組だけでなく、観光客もたくさん見かけました。

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ヴィーヴォ・ドルチャの人口は約500人、半分が60才以上という典型的な過疎の村。主人は子供時代、毎年夏1か月はこの村に滞在していたのですが、同じような子供たちがイタリア各地からやってきて、何十年とたった今も幼馴染と再会することもしばしばです。今年は特に多く、地元組を含め、フィレンツェ、ローマ、トリノからも集まりました。更に同年代の子供たちも仲良くなり、過去の彼らのように朝から晩まで遊ぶ「ザ・田舎の夏休み」。今年は地元組が地域社会協同組合を立ち上げ、アミアータ山の源泉所見学などのプログラムを始めたので、7月はこのプログラムに4家族で参加したり、森にトレッキングに行ったり、近郊に一緒に出掛けたりしました。

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私たちの滞在最終日前日には、次男たちを連れた3家族で、アミアータ山南西にあるモンテ・ラッブロに行ってきました。地元の幼馴染が大好きな場所でガイドをかって出てくれたのです。1800年代の後半、ここから一番近い村・アルチドッソ出身のダヴィデ・ラッツァレッリが立ち上げた新興宗教コミュニティがあり、「アミアータのキリスト」と呼ばれたカリスマの聖地。今は廃墟となっていますが、洞窟に祭壇があったり、ラッツァレッリのお墓があったり、そして何よりも、1193mから見下ろす360度のパノラマは圧巻でした。

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また別の日は、主人と2人でサンタ・フィオーラへ。ここは中世、アミアータ山からマレンマ地方一帯を治めたアルドブランデスキ家の本拠地があった場所で、2019年には「イタリアの最も美しい村」にも加盟された村。この村の面白いところは、旧市街が上下2つに分かれていることで、上にはかつての館や塔、ロッビア工房の彩色テラコッタが数多く残る教会、そして下はぺスケリーア(マスのいけす)や旧ユダヤ人地区など、歴史の中で残されてきた遺産があちらこちらに散らばっています。アミアータ山周辺は日本ではまだまだ知られていませんが、こうした自然や村がたくさんあるんですよ。

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しかし、田舎の夏休みの一番の醍醐味?は、のんびりダラダラ過ごすこと!特に約束はしなくても、18時半を過ぎるとワラワラと集まってきて、幼馴染のバール(カフェ)でアペリティーヴォ。夕飯の前に白ワインやカクテルを軽く飲みながら、おしゃべりに花を咲かせます。そして夕食が終わると、またもやワラワラと集まり、今度はエスプレッソやジェラートを食べながら、おしゃべりしながら夜が更けてゆく毎日。スローライフに慣れたとはいえ、日本人の私は動きたくなることもありますが、ゆっくりと友人たちと過ごす毎日はプライスレス。十分に充電してきたので、残暑も何とか乗り切れそうです。


文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。https://toscanajiyujizai.com/