トスカーナ州エルバ島

トスカーナおらが村便り| Mail Magazine 09 Settembre 2020

トスカーナと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、きっと、糸杉の連なる丘や、オリーブ畑などといった田園。もしくは、フィレンツェやピサ、シエナといった芸術都市ではないでしょうか?しかし、地図を見ると分かるように、トスカーナの西側は海に面し長い海岸線があります。そしてさらに、トスカーナ群島と呼ばれる島々があり、国立公園になっているのはあまり知られていません。その中でも一番大きなエルバ島は、なんとシチリア島、サルデニア島に続くイタリアで3番目に大きな島。とはいえ面積は224㎢しかなく、日本でいうと石垣島程度の大きさです。本土海岸沿いにもイタリア・ツーリングクラブが「ブルー・フラッグ」認定する美しいビーチがたくさんありますが、やはり島の海の美しさは格別!ここはカリブか?南太平洋か?と思ってしまうほど、クリスタルブルーの海を堪能することができます。

トスカーナ州エルバ島

今年の我が家の夏バカンスは、このエルバ島に行ってきました。エルバ島の魅力は、何といっても近いこと。フェリーが就航するピオンビーノへはフィレンツェからなら電車で3時間、リヴォルノやピサからなら1時間~1時間半。ピオンビーノからエルバ島までは、フェリーでたった1時間!スノーケリングやカヤックなどのシースポーツだけでなく、トレッキングやマウンテンバイクも。さらに古代ギリシャからナポレオンまでの歴史、長年経済を支えてきた鉱山、山間の古い村や港町など、見どころもたくさんあります。とはいえ、海を愛するわが夫と息子たちなので、ビーチを中心に1週間を楽しんできました。

トスカーナ州エルバ島

我が家の滞在地は、エルバ島の真ん中・南側にあるラコーナ湾。エルバ島きってのサラサラの砂浜の遠浅ビーチなので、家族に人気があります。しかし、エルバ島の面白さは様々なビーチが楽しめること!砂浜から小石のビーチ、更に岩場の船でしかたどり着けないビーチ。そして砂や石の色も、地質によって真っ白なものから赤や黒まで。島の端から端まで1時間前後で行けてしまうため、好みや風の向きに合わせて選ぶことができます。

トスカーナ州エルバ島

ラコーナ以外に行ったのは、北東にあるカーラ・セレーゴラ。エルバ島の東側は鉄や磁石の産地で、このビーチは採掘施設があった脇にあったこともあり、赤黒い砂にキラキラと光る鉱物が見られました。そしてエルバ島の中心的な港町・ポルトフェッライオがある北側は、白い石と海のブルーのコントラストが美しい有名ビーチが並ぶエリア。特に旧市街裏にあるレ・ギアイエ~パドゥレッラビーチ間は1971年から生態系保護地区となり、魚など多くの生物が見られることで有名です。私たちは駐車場所が見つからず、そのエリアよりも少し西のソットボンバビーチに行きましたが、ここでも十分にスノーケリングが楽しめました。

トスカーナ州エルバ島

そしてエルバ島の南側からフェリーで40分で、トスカーナ群島の1つ・ピアノ―ザ島へ。ここは港、港前の町、町の脇にあるビーチ以外は自由に入ることができず、それ以外は環境ガイド付きの各種ツアーでのみ見られるようになっています。たった1つのビーチとはいえ、フェリーは基本的に1日1便なので、それ以上の人が来ることはありません。昔あった刑務所も今は閉鎖され、かつての郵便局などの施設、民家も今は放置されて廃墟となっていて、タイムスリップしたような不思議な感覚を覚えました。

日本から来られるのは少し先になりそうですが、次のイタリア旅行計画には、ぜひトスカーナの海も候補に入れてみて下さい。ここもトスカーナ?と驚くくらい、美しい海が待っていますよ。


文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。https://toscanajiyujizai.com/