トスカーナおらが村便り| Mail Magazine 03 Giugno 2020

あっという間に6月になりました。皆さんご存じのように、イタリアはコロナウィルスが猛威を振るい、3月初旬から全土ロックダウンとなっていました。しかし先月から徐々にロックダウン緩和が始まり、5月18日からは居住地の州内は理由を問わない外出が許可され、あらゆるカテゴリーの商業活動が再開となったのです。平日は息子たちのオンライン授業があるので叶いませんでしたが、その週末の23日、念願のフィレンツェへ・・・数えてみると実に84日ぶりのフィレンツェ、いや、おらが村から出るのも実に84日ぶりでした。

車を停めたのは、ミケランジェロ広場。フィレンツェが一望できる絶好のパノラマスポットなので、いつもなら撮影場所の取り合いになるほどの混雑ですが・・・この日はほぼ貸し切り状態。独り占めできて嬉しいと同時に、その静けさに胸が締めつけられるような気持にもなりました。20年近く住んでいて、昼間にこんな姿を見るのは初めてです。

旧市街の中心に向かっていくと、だんだん人が増えてきました。いつもなら人混みで歩くのも困難なヴェッキオ橋ですが、普段は避けて通る市民もゆったりと散策を楽しんでいます。そんな中に、カメラや機材を持った撮影班が・・・どうやら、抗議のために店舗再開を見送っている工房の取材のようで、店主らしき人がインタビューを受けていました。ヴェッキオ橋以外の商店やレストランも、再開しているのは半数程度。やはり観光客がメインなのかそうでないのかで、明暗がくっきりと分かれています。

6月3日再開予定のウフィッツィ美術館は、ひっそりとしていました。先だってオープンしたボーボリ庭園はこの週末だけで2000人を超える人出、そして無料オープンを決めたドゥオモも全ての施設が予約満了となり、幸先の良いスタート。今はまだトスカーナ州からの人だけですが、州間移動が自由になると、外国人観光客に押されて今まで来られなかったイタリア人観光客もたくさんフィレンツェにやってくるのでは?そうなれば、今は「再開経費が捻出できない」と再開未定のフィレンツェ市立博物館10施設も、再開が近づくのでは・・・と期待しています。

何より嬉しかったのは、すれ違う人みんなが笑顔だったこと。マスク必須なのではっきり見えているわけではありませんが、やはりみな嬉しそうです。ソーシャル・ディスタンスを気にしながらも買い物や飲食を楽しむ人、そして、散策中に偶然、友人に会う人も・・・いつものイタリア人なら、久しぶりの再会にぎゅっとハグして頬でキスを交わすのですが、さすがにそれはお預け。ぎこちなく再開の感動を体で表現した後、近況などを伝え合う様子に私も胸が熱くなりました。そしてこの後、3か月ぶりに姑と再開した私も、何だかギクシャクしてしまい・・・何の躊躇もなく、抱きしめ合ったりおしゃべりできる日が早く訪れてくれることを、強く願わずにはいられません。


文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。https://toscanajiyujizai.com/