とんがり屋根の街並みトゥルッリ

アルベロベッロ観光ガイド|世界遺産トゥルッリの見どころ・アクセス・宿泊情報

まるで小人が住んでいるかのような、真っ白な壁に円錐形の屋根の家が連なる可愛らしい集落。きっとテレビや写真でご覧になったことがあるのではないでしょうか。今回は、おとぎ話の舞台のような街、アルベロベッロをご紹介します。

とんがり屋根の街並み・トゥルッリ

とんがり屋根の街並みトゥルッリ

アルベロベッロ(Alberobello)は、イタリアの形をブーツに例えるとちょうど踵のあたり、プーリャ州のバーリ県に位置する街。イタリア語でアルベロ(albero)は「樹」、ベッロ(bello)は「美しい」を意味し、家が立ち並ぶ街並みが美しい樹のように見えるという由来を持つ街です。前述した家々は「トゥルッリ(trulli)」と呼ばれるこの地域の伝統的な住居形式で、『アルベロベッロのトゥルッリ(The Trulli of Alberobello)』として、1996年に世界遺産に登録されました。ギリシャ語の「ドーム」が、トゥルッリの語源です。街の建物全体の4分の1に相当する約1600軒ものトゥルッリが、現存しています。2001年には、日本の岐阜県白川村と姉妹友好都市協定を調定しており、同じく世界遺産である白川郷の合掌造り集落の三角屋根とは、なんとなく通ずる雰囲気があるように感じられますよね。

とんがり屋根の街並みトゥルッリ

材料は全て、この地特有の石灰岩。平たく加工した石灰岩を積み、壁をまた石灰で塗ります。19世紀半ばまではつなぎを一切使わず、場所ごとに適した形なるように石灰岩をカットし、それを隙間なく積み上げていくという手法が用いられていました。石を円形に積むのは補強のためであり、約2メートルの厚みを持つ白い壁が夏の強い日差しからの紫外線を防ぎ、冬は外気を遮断し保温効果をもたらします。円錐形の屋根で受けた雨は、傾斜によって水路を通り、床下の貯水槽に貯められ、川や湖のないこの地域の貴重な生活用水に…と、この地で生活を送るに欠かせない多くの工夫が施されています。

壊すための家?!

とんがり屋根の街並みトゥルッリ

トゥルッリの単数形である、「トゥルッロ(trullo)」とは「部屋一つ、屋根一つ」の意味。16世紀初頭、こうした形式の住居が作られ始めました。人々の定住がはじめて記録されたこの頃、この地域はナポリ王国の支配下でした。新しい街の建設には王の許可が必須で、領主は王宮に税を納めなければなりません。封建領主であるアクアヴィーヴァ伯爵は、開拓のために入植させた約40世帯の農民たちに、モルタルなどの接合剤を使わない住居のみの建築を許可します。土台や骨組みもなく、石を積み上げただけのトゥルッリの家々は、とても簡易なもの。これにより「家ではなく、小屋である」と主張し、家屋に課せられる税から逃れたとされています。さらに徴税官が視察に訪れる際には、伯爵は農民たちに家を解体し避難するよう命じました。1644年、壊された大小の石が転がるだけで誰一人としていない街を見たナポリ王国視察団の記録には、「徴税を妨害するための家屋解体が行われたようだ」と残されています。この節税のための攻防合戦は、1700年頃まで続きます。また、領主による見せしめを目的に、歯向かう農民の家屋を壊しやすいように…との目的もあったようです。

街全体が世界遺産

とんがり屋根の街並みトゥルッリ

歴史とともに農民が知恵を絞り、磨かれ続けた匠の技を用いて建築された現在のトゥルッリに、不安定さはありません。今では、ホテルやお土産店、カフェやレストランとして活用されています。私もトゥルッリに宿泊したことがあるのですが、そこは2階建てになっており、1階が小さなキッチンとダイニングスペース、2階にはベッドとバスルームとなっていました。写真には納め切れないほど天井が高く、石造りの壁が暖かい印象を与えてくれるお部屋。世界遺産に宿泊するという、ユニークな体験ができました。

 
とんがり屋根の街並みトゥルッリ

訪れた頃はちょうどバレンタインの数週間前で、街全体で「Albe-love-bello」というテーマを掲げおり、「愛」をイメージしたデコレーションで溢れていました。夜になると至る所でプロジェクションマッピングが行われ、壁や石畳の道路にはたくさんのハートや天使のモチーフが。 真っ白な街が一転し、情熱的な赤一色のロマンティックな雰囲気に包まれていました。夏になると、家の壁に多くの花や植物が飾られ、花の匂いと色で包まれた街はまた違った顔になると、地元の方が教えてくれました。

 

トゥルッリは、2つの地域に密集しています。観光のメインはモンティ(Monti)地区で、一般住居と同じ建築様式のサン・アントニオ教会(chiesa sant’antonio)が名所の一つ。円錐屋根が、教会のクーポラ部分となっています。いくつかのお土産店は、屋根の上のテラスを無料で開放してくれています。お買い物が終わったら、是非お願いして、上がらせてもらいましょう。円錐屋根が目の前に立ち並ぶ姿は圧巻です。もう一つは、アイア・ピッコラ(Aia Piccola)地区。こちらは地元の方の一般住居がメインで、モンティ地区に比べると古いトゥルッリが多く残っています。それぞれの屋根には、呪術的な意味と他の家との区別にするための意味を持つ白い模様が描かれていたり、飾りがついていたりします。その違いを見比べながら静かに街歩きをするのも、とても面白いですよ。

文責/アドマーニ