
モンテプルチャーノとは?街とワイン、二つの意味を持つイタリアの名前
1. モンテプルチャーノという名前が持つ二つの意味
「モンテプルチャーノ」と聞いて、トスカーナの街を思い浮かべる方と、赤ワインを思い浮かべる方がいるかもしれません。
この名前には、地名としてのモンテプルチャーノと、ワインとしてのモンテプルチャーノという、二つの意味があります。
さらにややこしいのは、ワインの場合、同じ名前を持ちながらも成り立ちがまったく異なる二種類の赤ワインが存在すること。
この街とワイン、二つの側面から「モンテプルチャーノ」という言葉の背景をひも解いていきましょう。
2. トスカーナの丘の街・モンテプルチャーノ
地名としてのモンテプルチャーノは、イタリア・トスカーナ州シエナ県にある小さな丘の街です。
シエナ中心部からバスでおよそ1時間30分。キアーナ渓谷へ向かう道の先、丘を登ったところに街はあります。
距離だけを聞くと遠く感じるかもしれませんが、実際にはバスの本数も多く、観光客の姿も少なくありません。
何より魅力なのは、丘の上から見下ろすトスカーナらしい穏やかな風景。オレンジ色とはちみつ色の建物が連なる景色は、何度見ても心に残ります。
3. モンテプルチャーノの街を歩く楽しみ
街の中心、グランデ広場に立つドゥオモは、フィレンツェの大聖堂とは対照的な、静かで落ち着いた佇まい。
小さな街ならではの親密さがあり、広場に立つだけで時間の流れがゆっくりと感じられます。
旧市街から少し歩いた先にあるマドンナ・ディ・サン・ビアージョ教会は、まるで城のような重厚な姿が印象的です。
また、プルチネッラの塔では、道化師の像が1時間ごとに鐘を鳴らし、今も街に時間を知らせています。
こうした風景の中を歩くこと自体が、モンテプルチャーノという街の魅力です。
4. ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノというワイン
ワインとしてのモンテプルチャーノを語るとき、まず挙げられるのが「ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ」。
これは、トスカーナ州モンテプルチャーノ周辺で造られる赤ワインで、イタリア最高格付けDOCGに認定されています。
主に使われるブドウ品種はサンジョヴェーゼ。
土地の個性を映し出すこの品種は、エレガントで骨格のある味わいを生み出します。
モンテプルチャーノの街は、まさにサンジョヴェーゼの名産地。
街中の歴史ある地下セラーでは、ワインが静かに熟成され、トスカーナの時間を蓄えています。
5. モンテプルチャーノ・ダブルッツォというワイン
一方、「モンテプルチャーノ・ダブルッツォ」は、モンテプルチャーノというブドウ品種から造られる赤ワインです。
主な産地はイタリア中部のアブルッツォ州。
果実味が豊かで、酸は穏やか。
まろやかで親しみやすい味わいは、特別な日だけでなく、日常の食卓にも自然に寄り添います。
6. モンテプルチャーノのワインに寄り添う食卓
モンテプルチャーノの赤ワインは、決してワインだけで完結する存在ではありません。
土地に根ざしたワインだからこそ、料理とともにあることで、その魅力がより立体的に感じられます。
たとえば、オリーブオイルの香りやトマトの酸味を生かした前菜は、ワインの果実味を引き立ててくれます。
「トマトとオリーブとアボカドのブルスケッタ」は、素材のコクと爽やかさが重なり、赤ワインとの相性も良い一皿です。
軽やかながら満足感があり、食事の始まりにぴったりです。
しっかりとした味わいのワインには、やはり肉料理がよく合います。
「骨付きもも肉のグリル」は、噛みしめるほどに広がる旨みと香ばしさが、ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノの奥行きある味わいと美しく重なります。
オーブンでじっくり焼き上げる料理は、ワインとともに過ごす時間をゆったりとしたものにしてくれます。
一方で、モンテプルチャーノ・ダブルッツォのような親しみやすいワインには、軽やかさのある料理もよく合います。
「ささみと海老のコーングリッツフライ」は、衣の香ばしさと素材のやさしい旨みが、果実味のある赤ワインはもちろん、軽やかなワインとも相性がよく、日常の食卓で気負わず楽しめる一皿です。
これらの料理のレシピは、ベリッシモのレシピブログで詳しく紹介しています。
7. ワインと料理で楽しむ、モンテプルチャーノという時間
モンテプルチャーノは、街の名前であり、ワインの名前であり、
そしてもう一つ、食卓の風景を思い浮かべさせる言葉でもあります。
丘の上の街並みを思い描きながら、赤ワインと、それに寄り添う料理を味わう。
ベリッシモの食材やレシピが、その時間を少しだけ豊かにする存在であれば幸いです。
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