イタリアオペラ

イタリアオペラ

イタリアオリーブオイル~Chiacchiere!/Mail Magazine 17 Febbraio 2021

総合舞台芸術といわれるオペラは、音楽、演劇、文学、そして美術が融合した類い稀なエンターテイメントです。
およそ400年前に誕生したこのオペラ。美しい旋律に乗せて歌われる台詞で物語が進んでいきますが、演劇の違いは台詞の台本がすべて譜面でできていることなんです。
たとえオペラで何を歌っているかわからなくても、舞台上で歌われる台詞のすべてが美しく聴こえ、魅了されてしまいますよね。これこそがオペラの醍醐味と言えるでしょう。

もちろんオペラの魅力は音楽だけではありません。その演出や演技、歌詞(ぜひ機会があれば訳してみてください)、照明、歌手の衣装などなど・・・そのすべてを楽しむことができるのも、オペラが総合芸術といわれる故かもしれません。

「イタリアオペラ」

イタリアオペラ

オペラの2大大国はイタリアとドイツ。
皆様がなんとなく聞いたことがあるオペラの歌詞もイタリア語とドイツ語が多いのです。
オペラの作品は再演されるものが多く、100年以上前に作られた曲も多々あります。
それらのイタリアオペラの中でも人気作品の多くは、ストーリーを知っている方も多い『アイーダ』『カルメン』『蝶々夫人』などイタリアから程遠いアジアにある日本人でも聞いたことがありますよね。
私もイタリア留学当時、北イタリアにあるヴェローナの野外音楽劇場へアイーダを観に行きました。オペラ初心者であり、まだイタリア語がままならない状態でしたが、圧倒的な歌唱力と表現力に感動して身震いし、涙目になったことを覚えております。そのくらい、イタリアオペラには魅力があります。

「番号オペラ」

多くのオペラは、いくつかの幕に分かれ、それぞれが、いくつもの曲で構成されています。
それぞれの歌唱曲に番号を付けるイタリア・オペラ形式は「番号オペラ」と呼ばれ、19世紀初頭まで一般的でした。この形式では、それぞれの歌が独立して歌われるので、オペラ歌手がコンサートなどで「アリア」(:叙情的・旋律的な特徴の強い独唱曲のこと)だけ取り出して歌うこともあります。オペラを今まで聴いたことがない方でも、アリアの名曲選などもあり、映画やTVなどで聴いたことのある曲も多いはずです。
イタリアでは19世紀半ば頃、作曲家ワーグナーによってアリア中心ではなく、オーケストラを駆使し、そのドラマ性を重視した途切れることのないオペラが提唱され始めました。これが後のスタンダードとなります。
こうしてオペラの花形と言われるものは歌手だけでなくなり、ドラマを盛り上げる指揮者やオーケストラの表現力にも注目が集まるようになったのです。近年では、同じ作品でも演出家によって伝統的であったり、個性的であったりと趣向も変わり、その魅力はさらに広がりを見せています。

イタリアオペラ

パヴァロッティ 太陽のテノール

イタリアオペラ

こちらのドキュメンタリー映画をご存知ですか?
パヴァロッティといえば、ひげもじゃで愛嬌たっぷりの笑顔が印象的な、「三大テノール」の一人です。
聞いたことがない方でももしかしたら、写真を見たらわかるかもしれません。それほど有名な”イタリアの国宝”と言われるほどのオペラ歌手、パヴァロッティ。
映画は、パヴァロッティが2007年に71歳で亡くなるまでの活躍を追いながら、2人の奥さんや3人の娘、マネージャーやエージェント、音楽家仲間のインタビューを通して、そのプライベートや人となりをたどっていく…のですが、それよりもっと歌の映像が多いと思い込んでいましたが・・・。
映画の中で流れてくる『オーソレミオ』や、『誰も寝てはならぬ』などの名曲オペラの数々。そもそも良い曲であることに間違いないのですが、それを歌い上げるパヴァロッティの歌声は、素晴らしいというか鳥肌が立つほど震えるというか、言葉で言い表せないくらいの感動です。さすがは ”神に祝福された声”、“キング・オブ・ハイC”(三点ハの王者)って何なんだろう、どうしたらあんなに簡単そうに綺麗に安定した声を出し続けることができるんだろう、とただただ圧倒され、久しぶりに映画で、音楽で、感動して涙が出ました。

映画では十数年前のコンサート映像なんかを映画の中で見ている(聞いている)のに、パヴァロッティの美声を感じられるとは、ロン・ハワード監督が音に大変こだわったということもあり、とにかく”すごい”の一言です。
家族の時間を大切にする優しい様子や、聞いてくれるお客さんのためにという優しい気持ち、何よりパヴァロッティのチャーミングな人柄に、こちらも笑顔になります。ちょっとした(?)スキャンダルもありますが、それだけ誰からも愛される人だったのでしょう。
最初の奥さんが語る、「彼の声を愛さない人なんている?」は最高の愛情表現だと思いました。
2006年のトリノオリンピック開会式でのパヴァロッティの登場に、オペラ好きであれば誰もが驚いたに違いありません。そこで歌われた『誰も寝てはならぬ』にイタリア中も大興奮。実際は録音だったと後に明らかになり批判もあったようですが(イタリアらしいです笑)、それでも世界中の感動を生んだことは間違いありません。そしてこれがパヴァロッティ最後のステージともなりました。
映画の紹介文にあった通り、<人類史上最高の歌声>。生で聞いてみたかったです。
残念ではありますが、この映画やたくさんのCDや映像でパヴァロッティの名演の記録は残っているので、そういったものでぜひ皆様も楽しんでいただけたらと思います。

イタリアオペラ

オペラ界の三大テノール

ご存知の方がほとんどかとは思いますが、三大テノールとは、

・ルチアーノ・パヴァロッティ(イタリア)
・プラシド・ドミンゴ(スペイン)
・ホセ・カレーラス(スペイン)

の3人が1990年7月のサッカーW杯イタリア大会の決勝前夜、ローマで一緒にコンサートを行ったのが始まりだそうです。世界中の人々が3人の歌う、プッチーニのオペラ、トゥーランドットの『Nessun Dorma(誰も寝てはならぬ)』を聞いたといいます。そこから、「The Three Tenors」としての活動が始まり、2002年の日韓共催ワールドカップの際には横浜アリーナでそれぞれの美声を披露しています。
それぞれ大そうモテたようで、女性スキャンダルのニュースもちらほら。
今になってセクハラだなんだと騒がれていたドミンゴ氏とカレーラス氏ですが、私としては訴えた側に「なぜ今頃?」と思ったり、パヴァロッティ氏もそうでしたが、とにかく人を魅了してしまうんだからないんだろうなぁと思ったり。あんなにいい声で愛の歌を歌われたら、「自分のこと??」となってしまう女性がいてもおかしくないですよね。
パヴァロッティ氏が亡くなって、三大テノールとしての活動も終わりとなってしまいましたが、ドミンゴ氏とカレーラス氏はその後も活動を続けていました。
演奏会は、なかなか実施も難しい今、せめて映画館など良い音響で彼らの歌声を聞けば、心穏やかになれることは間違いないでしょう。上質なクラシックに心を委ね、たまには穏やかな日を迎えてみてはいかがでしょうか?

文/アドマーニ