
ジェラートの歴史とは?イタリアで愛される理由やアイスクリームとの違い、珍しい味まで解説
ローマの休日でオードリー・ヘップバーンがスペイン広場の階段に座り、美味しそうに頬張っていたもの……。
そう、イタリアで老若男女に愛されるジェラートです。この名シーンに憧れ、ローマのジェラートを食べに訪れた人も多いことでしょう。
ジェラートは、今やイタリアを代表するスイーツのひとつですが、その歴史をたどってみると、実はとても古く、意外なルーツが見えてきます。この記事では、ジェラートの歴史や由来、アイスクリームとの違い、さらにはイタリアならではの珍しい味までご紹介します。
ジェラートの歴史はどこから始まったのか
ジェラートの“原形”としての最古の記録は、旧約聖書にあると言われています。山羊の乳と蜜を、長老たちは氷雪で冷やし、今で言うミルクシャーベットのようなものを飲んでいたようです。そして、これは“栄養補給”のために飲んでいたとか。
その後、果汁やはちみつを混ぜたものも徐々に広まっていき、古代ローマ時代の皇帝や貴族も、この甘くて冷たい飲み物をとても気に入り、楽しんだと言われています。
古代ローマ時代のジェラートの原形と皇帝ネロ
実は、この貴族たちが楽しんだ飲み物が市民に広まったのは、暴君として名高い皇帝ネロからの命令も一つの要因になっているとか……。ネロは、奴隷に命令をし、アルプスから雪を運ばせ、はちみつ、バラやすみれなどの花のエッセンスや樹液、果汁などを混ぜて作った飲みものである通称「ドルチェ・ヴィータ」を愛飲し、これがローマ市民の間にまで広まったという話もあります。
こうして見ると、ジェラートの歴史は単なる冷たいお菓子の話ではなく、古代から続く食文化の流れの中で育まれてきたことがわかります。
ジェラートの由来は中国から?マルコ・ポーロとの関係
ジェラートの原形となった飲み物が、さらに形をなして、食べられるようになったのは、マルコ・ポーロの時代。彼の著書『東方見聞録』に、中国で牛乳を凍らせたもの(アイスミルクのようなもの)を食べた、というような記述があり、その作り方がヴェネツィアで評判となったそうです。これは諸説ありますが、アイスがイタリアに伝わったのは、中国からということになるのですね。
ジェラートの由来をたどると、イタリア国内だけでなく、中国との文化的なつながりまで見えてくるのが興味深いところです。
シチリアとアラブ商人が伝えたシャーベット文化
もう一つ、アイスミルク以外にもジェラートのルーツと言われるのは、シャーベット。これは、古代ヨーロッパ文明の通り道であった9世紀頃のシチリアに、アラブ商人が持ち込んだもののようです。
実はこのシャーベット、フランスに伝わるきっかけとなったのは、かの有名なフィレンツェの大富豪、メディチ家が振る舞った食事から、とも言われています。カトリーヌ・ド・メディチがフランス王アンリ2世に嫁ぐ時、カトリーヌは多くの菓子職人や料理人を連れてフランスへ入国しました。その結婚式ではイタリアの豪華な料理が振る舞われたのですが、その中でも、多くのフルーツやナッツ、ピスタチオなどを使ったシャーベットは、当時のフランス貴族の舌をうならせたとか。
現在のジェラートにつながる転換点とは
また、ジェラートへ近づいたきっかけもまた、メディチ家がスペイン王を招く際に振る舞った食事と、一説では言われています。食事の最後に、美味しく珍しいデザートを何か準備できないか、と建築家ベルナルド・ブオンタレンティに命じました。
美食家として知られるベルナルド・ブオンタレンティは、当時の冷凍技術を駆使し、クリームに砂糖を加えて作った氷菓子、つまり製法としては現在のジェラートの道筋を作ったと言われており、これがシャーベットからジェラートへの転換となったようです。
この流れを見ると、現在私たちが知るジェラートは、長い歴史の中で少しずつ形を変えながら完成していったことがわかります。
ジェラートはいつ庶民に広まったのか
このように、元々は貴族のデザートとして食べられていたジェラートですが、その後ようやく17世紀の最後には庶民にも広まっていきました。そして、今日でもイタリア国内でジェラートは未だに成長を続けています。
それは、味に対する研究、成長はもちろんのこと、市場も成長し続けており、ジェラート店はなんと4万店近くもあるのだそう。それだけイタリア人はジェラートを愛し、食べ続けている、さらにはこれだけ長い歴史の中で、食べ継がれている、ということですね。
イタリアでジェラートが愛され続ける理由
これだけのジェラート愛からか、実は最近イタリアの国会で、ジェラートを守る目的の法案も提出されたのだそうです。牛乳や乳製品、卵、新鮮な果物以外の原材料の使用を違法とし、ジェラートに関する品質基準を定め、その品質を下回った場合には罰金を科す、という法案が6人の国会議員から提出され、イタリア上院で審議されているようです。
香料や着色料などの安い人工的な材料が含まれるジェラートを販売した場合は、最高1万ユーロ(約130万円)の罰金、さらに、ふわっとした食感にするために使用される空気の注入も禁止という内容だそうです。ジェラート職人が作る場合は、原材料を混ぜる際に約20%から30%の空気が含まれるようですが、工場で生産されるジェラートには最大80%が含まれるようです。
イタリア政府によると、ジェラートの経済効果はなんと約10億ユーロ(1300億円)。先にも述べた通り、イタリア国内には4万店ものジェラート店がある程ですから、ジェラートはMade in Italyというブランドの一つです。ただ、この法案を提出した議員の一人は、「ジェラートは、イタリアのピザやパスタと並ぶ美食のシンボルの1つである一方で、今の法律では手作りのジェラートと、職人自身が守られていない」とコメントをしているそうで、確かにイタリアの伝統とジェラート職人を守るためには必要なのかもしれません。
ジェラートの定義とは?アイスクリームとの違い
姿かたちは似ているものの、そもそもジェラートとアイスクリームの違いとは何なのでしょうか。
まずは、乳脂肪の割合が異なります。日本のアイスクリームというのは乳固形分が15%以上、うち8%以上は乳脂肪でなければならないという決まりがある一方、イタリアのジェラートは乳脂肪分が5%前後というのが一般的です。
また、製品の温度についても、アイスクリームがマイナス18度以下、ジェラートはマイナス10度前後です。
このように比べると、ジェラートの方が乳脂肪分が少ないので、あっさりしていることが分かりますね。冷たすぎず、素材の風味を感じやすいことも、ジェラートの魅力のひとつです。
イタリアのジェラートにはどんな味がある?
バニラ、ミルク、チョコレート、ピスタチオ……ジェラートの味の王道ですよね。各地には地元の味、地元産というのにもこだわるお店も多くあります。地元のぶどうを使ったり、レモンを使ったり。同じレモンでも、各地のレモンの味によって少しずつ味わいが異なるので、それを味わうのもジェラートの一つの楽しみですね。
実は、イタリアにはおよそ600前後のジェラートの味が存在しているらしいのですが、結局のところ、味は無限大。なので、もしかしたら、それ以上にあるかもしれません。およそ600もの味があるということは、その中には色々な変わり種のジェラートもあるでしょうね。
めずらしい味のジェラートとイタリアらしい発想
イタリアでは定番になりつつあるものの、日本人からするとちょっと変わり種というジェラートの味の一つ、“リーゾ”。
リゾットのリーゾ、つまりお米味です。
この発想がまずは面白いですね。健康志向ブームが到来した際に登場した味のようで、素朴な甘みがあります。
その他の味は、それぞれのジェラート屋さんの店主の好みもあると思いますが、ウコンが手に入ったから、という理由でウコンとフルーツを組み合わせたものがあったり、オリーブオイル味、コーン味、トマト味、タイムやローズマリーなどのハーブ味もあったりします。かなり冒険的な味であることが想像できますが、ニンニク、タマネギを混ぜたというジェラートもあるようです。
でも、新しい味にチャレンジすることで、こういった変わり種の中からお気に入りが見つかるかもしれませんね。
美味しいジェラート屋さんを見分けるコツ
実は、美味しいジェラート屋さんを見分けるコツもあり、その一つに“旬のメニューがあるかどうか”が目安になったりします。手作りで、新鮮な材料を使っているからこそ、旬のメニューを出すことができます。
季節のフルーツを使ったジェラートはもちろんですが、ちょっと変わり種だけど、旬の食材を使っているジェラート屋さんは、美味しいお店かもしれませんので、ぜひチェックしてみて下さいね。
まとめ|ジェラートの歴史を知ると、イタリアの味わいはもっと楽しくなる
ジェラートは、ただ冷たくて甘いだけのお菓子ではなく、古代の氷雪文化、古代ローマの嗜好、シチリアに伝わったシャーベット文化、そしてルネサンス期の美食の流れの中で育まれてきた、イタリアらしさの詰まった食文化です。
さらに、イタリアでは今もなお、素材や季節感、職人の技を大切にしながら、ジェラートが日常の中で親しまれ続けています。アイスクリームとの違いを知るとその魅力はよりはっきり見えてきますし、珍しい味の背景に目を向けると、イタリアの食の奥深さがいっそう感じられるはずです。
ベリッシモでも、こうしたイタリアの食文化や、その土地ならではの味わいを大切にご紹介しています。ジェラートの歴史に心ひかれた方は、ぜひベリッシモで、イタリアの食材や食文化の楽しさにも触れてみてください。きっと、食卓の中でイタリアがもっと身近に感じられるはずです。
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