
イタリア北部トレントとは?アルプスに抱かれた土地が育てた食文化
1.イタリア通ほど気になる“長靴の奥”にある土地
イタリアは、長靴の形をしていることから
「Lo Stivale(ロ・スティバーレ)」と呼ばれることがあります。
では、その長靴に足を入れる“奥の部分”には、どんな土地があるのでしょうか。
観光ガイドで大きく特集されることは少ないけれど、イタリアの食や暮らしに関心のある人ほど、ふと気になってしまう地域があります。
それが、トレント・アルト・アディジェ州。
アルプスに抱かれ、日本ではまだあまり知られていない、イタリア北部の土地です。
2.トレントという街が持つ、少し不思議な成り立ち
この州の州都が トレント。
古代ローマ時代には「Tridentum」と呼ばれていました。
ラテン語で“三叉槍”を意味するこの名前は、
街を流れる三本の川の姿に由来すると言われています。
20世紀初頭まで、ここはイタリアではなくオーストリア帝国の領土でした。
第一次世界大戦後、1920年にイタリア領となったため、
街並みや言葉、そして食文化には、今も中欧の面影が残っています。
イタリア語とドイツ語が共存する——
そんな土地は、イタリアの中でも決して多くありません。
3.山に囲まれた土地が育てた食文化
トレント・アルト・アディジェ州は、
美しい山岳風景とスキーリゾートで知られています。
けれど、この土地の本当の魅力は、「暮らしの中で育まれてきた食」にあります。
冷涼で寒暖差のある気候、雪解け水がもたらす清らかな水、厳しい冬を越えるための保存の知恵
こうした条件が重なり、派手さはないけれど、体にすっと馴染む食材と料理が生まれてきました。
バターやチーズ、燻製肉、穀物料理。そして、山に囲まれながらも育まれてきたオリーブオイルやワイン。
「なぜこの土地の食材は、静かに美味しいのか」その答えが、ここにはあります。
4. 中世とルネサンスが溶け合う、トレントの街並み
ドゥオーモ広場|街の時間が交差する場所
トレントの中心にあるのが ドゥオーモ広場。
噴水と大聖堂を囲むように、バールや人々の声が行き交います。
観光地でありながら、どこか“日常”の空気がある広場。
エスプレッソを飲みながら、ただ座って過ごす時間も、この街らしさです。
ブオンコンシリオ城|今も残る中世の記憶
もう一つ欠かせないのが ブオンコンシリオ城。
何度も攻撃を受けながら、陥落することなく残った城壁。
中に足を踏み入れると、フレスコ画や装飾が、当時の時間をそのまま伝えてくれます。
5.伝統だけで終わらない、今のトレント
トレントが面白いのは、「古い街並みを残したまま、止まっていない」ことです。
中世の建物が並ぶ街を歩いていると、ふと現れるのが、現代的なガラス建築。
MuSe科学博物館は、自然と科学をテーマにした博物館でありながら、どこか“公園の延長”のような場所です。
家族連れや学生が、特別な構えもなく出入りしています。
BUC図書館も同じように、勉強の場でありながら、バールで一息つく人の姿がごく自然にあります。
学ぶことと暮らすこと。その二つが、わざわざ分けられていない風景。
それが、今のトレントを形づくっている価値観なのかもしれません。
6.食を楽しむ人が集まる、季節のイベント
冬|クリスマスマーケット
ドイツやオーストリア文化の影響を色濃く残す、トレントのクリスマスマーケット。
夕方になると、広場にはホットワインの甘い香りが広がり、厚手のコートに身を包んだ人たちが、自然と立ち止まり、言葉を交わし始めます。
ホットワインを片手に、寒さを言い訳に、少しだけ距離が近くなる。
ここには、「食は人をつなぐ」という感覚が、ごく当たり前にあります。
夏|Feste Vigiliane
夏に行われる Feste Vigiliane では、伝統衣装のパレードや歴史の再現が、街のあちこちで繰り広げられます。
屋台には郷土料理が並び、観光客も地元の人も、同じテーブルを囲んで食事を楽しみます。
街全体が、食と物語で満たされる数日間。トレントという土地の“素顔”が、いちばんよく見える時間かもしれません。
7.トレントを知ると、食材の見え方が変わる
ヴェローナから車で約1時間。「知る人ぞ知る」という言葉が、これほど似合う街も珍しいかもしれません。
トレントを知ると、イタリアの食材を見る目が、少し変わります。
✔ なぜこの味なのか
✔ なぜこの製法なのか
✔ なぜ“続けたくなる美味しさ”なのか
それは、土地と暮らしが見えてくるから。
8.日常の食卓で、イタリア北部の空気を
イタリア食材ベリッシモでは、こうした土地の背景を大切にした食材を選んでいます。
特別な日のためではなく、今日の料理が、自然に美味しくなるためのもの。
トレントのように、派手ではないけれど、確かな豊かさを感じられる食材です。
旅をしなくても、食卓から始まるイタリア北部への小さな旅。
よろしければ、ベリッシモで探してみてください。
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