イタリア北部トレントのドゥオーモ広場。夕暮れの空の下、中世の建築と大聖堂が並ぶ歴史的な街並み

イタリア北部トレントとは?アルプスに抱かれた土地が育てた食文化

1.イタリア通ほど気になる“長靴の奥”にある土地

トレントの聖シモニーノ、ピエトロ・ステファノーニ画、1607年
トレントの聖シモニーノ
ピエトロ・ステファノーニ画(1607年)

イタリアは、長靴の形をしていることから
「Lo Stivale(ロ・スティバーレ)」と呼ばれることがあります。
では、その長靴に足を入れる“奥の部分”には、どんな土地があるのでしょうか。
観光ガイドで大きく特集されることは少ないけれど、イタリアの食や暮らしに関心のある人ほど、ふと気になってしまう地域があります。
それが、トレント・アルト・アディジェ州。
アルプスに抱かれ、日本ではまだあまり知られていない、イタリア北部の土地です。

 

2.トレントという街が持つ、少し不思議な成り立ち

イタリア北部トレント地方の湖畔風景。山に囲まれた静かな湖と、水辺に広がる集落
イタリア北部トレント地方の湖畔風景。
山に囲まれた静かな湖と、水辺に広がる集落

この州の州都が トレント。
古代ローマ時代には「Tridentum」と呼ばれていました。
ラテン語で“三叉槍”を意味するこの名前は、
街を流れる三本の川の姿に由来すると言われています。
20世紀初頭まで、ここはイタリアではなくオーストリア帝国の領土でした。
第一次世界大戦後、1920年にイタリア領となったため、
街並みや言葉、そして食文化には、今も中欧の面影が残っています。
イタリア語とドイツ語が共存する——
そんな土地は、イタリアの中でも決して多くありません。

 

3.山に囲まれた土地が育てた食文化

イタリア北部トレント地方の冬の山岳風景。雪に覆われたアルプスの山々とスキーリゾートの様子
イタリア北部トレント地方の冬の山岳風景。
雪に覆われたアルプスの山々とスキーリゾートの様子

トレント・アルト・アディジェ州は、
美しい山岳風景とスキーリゾートで知られています。
けれど、この土地の本当の魅力は、「暮らしの中で育まれてきた食」にあります。
冷涼で寒暖差のある気候、雪解け水がもたらす清らかな水、厳しい冬を越えるための保存の知恵

イタリア北部トレント地方の冬景色。雪に包まれた教会とアルプス山脈を背景にした静かな集落
イタリア北部トレント地方の冬景色。
雪に包まれた教会とアルプス山脈を背景にした静かな集落

こうした条件が重なり、派手さはないけれど、体にすっと馴染む食材と料理が生まれてきました。
バターやチーズ、燻製肉、穀物料理。そして、山に囲まれながらも育まれてきたオリーブオイルやワイン。
「なぜこの土地の食材は、静かに美味しいのか」その答えが、ここにはあります。

 

4. 中世とルネサンスが溶け合う、トレントの街並み

ドゥオーモ広場|街の時間が交差する場所

https://www.bellissimo.jp/blog/wp-content/uploads/2026/01/Trento_Duomo.jpg

トレントの中心にあるのが ドゥオーモ広場。
噴水と大聖堂を囲むように、バールや人々の声が行き交います。
観光地でありながら、どこか“日常”の空気がある広場。
エスプレッソを飲みながら、ただ座って過ごす時間も、この街らしさです。

ブオンコンシリオ城|今も残る中世の記憶

イタリア北部トレントのブオンコンシリオ城。夜にライトアップされた中世の城壁と歴史的建築

もう一つ欠かせないのが ブオンコンシリオ城。
何度も攻撃を受けながら、陥落することなく残った城壁。
中に足を踏み入れると、フレスコ画や装飾が、当時の時間をそのまま伝えてくれます。

 

5.伝統だけで終わらない、今のトレント

イタリア北部トレントの旧市街。赤い屋根が連なる中世から続く街並みと暮らしの風景

トレントが面白いのは、「古い街並みを残したまま、止まっていない」ことです。
中世の建物が並ぶ街を歩いていると、ふと現れるのが、現代的なガラス建築。
MuSe科学博物館は、自然と科学をテーマにした博物館でありながら、どこか“公園の延長”のような場所です。
家族連れや学生が、特別な構えもなく出入りしています。
BUC図書館も同じように、勉強の場でありながら、バールで一息つく人の姿がごく自然にあります。
学ぶことと暮らすこと。その二つが、わざわざ分けられていない風景。
それが、今のトレントを形づくっている価値観なのかもしれません。

 

6.食を楽しむ人が集まる、季節のイベント

冬|クリスマスマーケット

イタリア北部トレントのクリスマスマーケット。夜の広場に並ぶ屋台と、冬の光に包まれた賑わいの風景

ドイツやオーストリア文化の影響を色濃く残す、トレントのクリスマスマーケット。
夕方になると、広場にはホットワインの甘い香りが広がり、厚手のコートに身を包んだ人たちが、自然と立ち止まり、言葉を交わし始めます。
ホットワインを片手に、寒さを言い訳に、少しだけ距離が近くなる。
ここには、「食は人をつなぐ」という感覚が、ごく当たり前にあります。

夏|Feste Vigiliane

イタリア北部トレントで行われるフェステ・ヴィジリアーネ。中世の衣装をまとった人々が再現行事に参加する夜の祭りの様子
イタリア北部トレントで行われるフェステ・ヴィジリアーネ。
中世の衣装をまとった人々が再現行事に参加する夜の祭りの様子
©Maurizio Napolitano

夏に行われる Feste Vigiliane では、伝統衣装のパレードや歴史の再現が、街のあちこちで繰り広げられます。
屋台には郷土料理が並び、観光客も地元の人も、同じテーブルを囲んで食事を楽しみます。
街全体が、食と物語で満たされる数日間。トレントという土地の“素顔”が、いちばんよく見える時間かもしれません。

 

7.トレントを知ると、食材の見え方が変わる

ヴェローナから車で約1時間。「知る人ぞ知る」という言葉が、これほど似合う街も珍しいかもしれません。
トレントを知ると、イタリアの食材を見る目が、少し変わります。
✔ なぜこの味なのか
✔ なぜこの製法なのか
✔ なぜ“続けたくなる美味しさ”なのか
それは、土地と暮らしが見えてくるから。

 

8.日常の食卓で、イタリア北部の空気を

イタリア食材ベリッシモでは、こうした土地の背景を大切にした食材を選んでいます。
特別な日のためではなく、今日の料理が、自然に美味しくなるためのもの。
トレントのように、派手ではないけれど、確かな豊かさを感じられる食材です。
旅をしなくても、食卓から始まるイタリア北部への小さな旅。
よろしければ、ベリッシモで探してみてください。