フィレンツェの丘、いちばん高い畑から。
トスカーナ州スカンディッチ、フィレンツェから南西へ15キロほどのペーザ渓谷。なだらかな丘が連なるこの土地に、ファットリア サン・ミケーレ・ア・トッリの農園があります。75ヘクタールのオリーブ畑に、12,000本を超えるオリーブの木。そのなかでも最も標高の高い300メートルの畑から、11月のはじめに収穫した実だけが「ラウデミオ」になります。フラントイオとモライオーロを軸に、レッチーノ、ペンドリーノ、チェレッターナを少量あわせた有機エキストラバージンオリーブオイル。青々とした草の香りと、喉に残るぴりっとした辛味が、トスカーナのオイルそのものです。
審査員5人全員の合格なしには、名乗れない
ラウデミオ(Laudemio)とは、中世に小作人が領主へ納めた収穫物のうち、最も良い部分を指す言葉でした。その名を冠した協会が生まれたのは1988年。トスカーナの生産者たちが集まり、D.O.P.もI.G.P.もまだ存在しなかった時代に、自分たちで「最高のトスカーナ産オリーブオイルとは何か」を定義するために設立したものです。
サン・ミケーレ・ア・トッリでは、まず自社でテイスティングを重ね、ラウデミオ候補のオイルを選別します。しかし社内の選別だけでは名乗ることができません。ラウデミオ協会の検査機関と、二つの試飲委員会による審査。ここで審査員5人全員の合格を得たオイルだけが、あの八角形のボトルに詰められます。フランスの古い香水瓶をモチーフにしたという独特の形は、協会が意匠登録している共通ボトルです。
同じ農園の同じ木から搾ったオイルであっても、この関門を越えられるとはかぎりません。ラウデミオという名前は、産地でも品種でもなく、審査を通過したという事実そのものを指しています。
味わいと特徴
栓を開けると、刈りたての草とアーティチョークを思わせる青い香りが立ちます。口に含むとオリーブの果実味がはっきりと広がり、最後に喉の奥がぴりっとする辛味が残ります。この辛味と、その手前にあるほのかな苦味が、トスカーナのオイルの骨格です。
このオイルの特徴
- 草やアーティチョークを思わせる、青くさわやかな香り
- はっきりとした果実味と、後から来るぴりっとした辛味
- 酸度0.15%(オレイン酸換算)と、規定値0.8%を大きく下回る低さ
- 収穫から8時間以内に搾油、24時間以内にろ過
- EUオーガニック認証。1993年から続く有機栽培の畑から
搾りたては緑が強く、時間とともに黄金色へと落ち着いていきます。どちらも自然な変化で、品質の良し悪しを示すものではありません。
生食に限定して使う、特別なオイル
トスカーナの食卓ではオリーブオイルが欠かせず、そのこだわりも徹底しています。用途によってオイルを買い分けるのが当たり前で、ラウデミオはそのなかでも生食に限定して使う一本です。加熱すればこのオイルの持ち味である香りは失われてしまいます。炒めものや揚げものには手頃なオリーブオイルを使い、こちらは仕上げの一振りに。
こんな使い方で
- かたく焼いたパンに塩とともに。トスカーナの定番、フェットゥンタです
- 白いんげん豆やひよこ豆の煮込みに、たっぷりと
- ローストした肉の仕上げに。ローズマリーと相性が良いです
- 焼きアスパラガスや温野菜に、塩とオイルだけで
- リゾットやミネストローネに、食卓で数滴
- 白身魚のカルパッチョやサラダに。青い香りが素材の甘みを引き立てます
標高300mの畑から、8時間以内に搾る
75ヘクタールのオリーブ畑のうち、ラウデミオに使われるのは最も標高の高い300メートルの区画だけ。収穫は11月のはじめです。青い実のうちに一斉に摘んでしまうのではなく、それぞれの木がちょうど良い熟度に達するのを待ちます。緑の実と色づきはじめた実が混ざるのは、そのためです。緑の実は香りと辛味を、熟した実はまろやかさをもたらします。その配合が、このオイルの均衡をつくっています。
摘んだ実は、収穫から8時間以内に自社の搾油所で搾られます。オリーブは木から離れた瞬間から劣化がはじまるため、この時間の短さがそのまま香りと酸度に表れます。搾ったオイルはさらに24時間以内にろ過し、香りと風味を損なう微細な果肉分を取り除いてから貯蔵へ。朝に摘んだ実が、その日のうちにオイルになっている計算です。
国際コンクールでの評価
2025年、ロサンゼルスの国際オリーブオイルコンクールで最高位ベスト・オブ・クラス金賞と、イタリアのオリーブオイル研究者マルコ・ムジェッリの名を冠した特別賞を受賞。同じ年に、ニューヨークの NYIOOC 金賞、日本では JOOP(ジャパン・オリーブオイル・プライズ)オーガニック部門の金賞と、JOOTA(東京オリーブオイルプライズ)の金賞を得ています。ほかにドバイ国際オリーブオイルコンクール、ロンドン IOOC でも金賞を受賞しました。
※受賞歴は生産者が公表しているものです。
家族に食べさせたいものから、はじまった農場
1980年代の終わり、パオロ・ノチェンティーニ氏がこの地の古い領主の建物と農地を買い取ったのが、農場のはじまりです。動機は事業ではありませんでした。家族と大切な友人たちに、安心して食べられるものを届けたい。ただそれだけだったといいます。やがてその輪を広げたいと考えるようになり、法人化。「自然なものだけを使い、生物多様性を尊重すること。それが人と環境のための農業の基盤である」という考えのもと、1993年という早い時期に有機農法へ切り替えました。オーガニックがまだ一般的な言葉ではなかった頃のことです。
持続可能性への姿勢は農法だけにとどまりません。農場の活動に使う電力は、すべて太陽光による自家発電でまかなわれています。オリーブ畑には家畜が放たれ、下草もそのまま。畑そのものが一つの生態系として成り立つように保たれています。
生産品も年々広がりました。オリーブオイルとワインという昔からの柱に加え、2000年からは希少な在来豚チンタ・セネーゼの飼育と加工品づくりを開始。野菜、卵、小麦粉、はちみつ、パンまでを農場直営のショップで売る、地元の人が毎日買いに来る直売型の農場になっています。ワインはキアンティ・クラッシコとキアンティ・コッリ・フィオレンティーニという二つのDOCGの産地にあり、15世紀から使われてきたセラーを今も受け継いでいます。
500mlと250ml、二つのサイズ
日々の料理に使うなら500ml、まずは試してみたい方や贈りものには250ml。どちらも協会規定の八角形ボトルと専用の化粧箱に収められています。ラウデミオが箱付きで流通するのは、光からオイルを守るための協会の取り決めによるものです。
まずはパンを一切れ焼いて、塩とこのオイルだけで召し上がってみてください。フィレンツェの丘のいちばん高い畑から届いた一本が、どういうものかがよく分かります。
よくあるご質問
辛味が強いのですが、品質に問題はありませんか?
問題ありません。喉の奥がぴりっとする辛味とほのかな苦味は、ポリフェノールによるものです。搾りたてで良質なエキストラバージンオリーブオイルに共通する特徴で、トスカーナのオイルはとりわけこの傾向がはっきりしています。
加熱調理に使えますか?
お使いいただけますが、生食用としてお使いいただくのがおすすめです。現地トスカーナでも、ラウデミオは生食に限定して使うオイルとされています。加熱すると香りが失われてしまうため、炒めものや揚げものには手頃なオリーブオイルを、こちらは仕上げにかける一本としてお使いください。
冷蔵庫に入れたら白く濁って固まりました。大丈夫ですか?
品質に問題はありません。オリーブオイルは低温になると成分が結晶化し、白く濁ったり固まったりします。常温に戻せば元通りになります。保管は冷蔵庫ではなく、直射日光の当たらない常温の暗い場所をおすすめします。
開封後はどのくらいで使い切ればよいですか?
開封すると空気に触れて酸化が進みます。栓をしっかり閉め、直射日光と高温を避けて保管のうえ、なるべく早めにお使いください。使い切りやすさを重視される場合は250mlをおすすめします。
収穫年によって味は変わりますか?
変わります。オリーブオイルは農産物ですので、その年の天候によって色・香り・辛味の強さに差が出ます。同じ銘柄でも毎年少しずつ表情が異なるのは、単一農園でつくられるオイルならではの面白さです。
500mlと250ml、どちらを選べばよいですか?
サラダや温野菜、仕上げのひとかけなど日常的にお使いになるなら500ml。はじめてお試しになる方、少人数のご家庭、贈りものには250mlが向いています。中身は同じオイルです。
ラウデミオは他の生産者のものもありますが、違いはありますか?
ラウデミオは1988年に設立された協会の名前で、トスカーナの厳選された生産者がそれぞれ自分の畑のオイルをこの名前で出しています。共通のボトルと厳しい審査基準を持ちながら、品種の構成や畑の土壌によって味わいは一つひとつ異なります。こちらはサン・ミケーレ・ア・トッリが、有機栽培の畑の最も標高の高い区画から造ったものです。