アミアータ山の栗祭り
10月に入り、ますます秋が深まってきているトスカーナです。秋といえばやはり食祭り、その中でも10月は各地で行われる栗祭りでにぎわう月。トスカーナの栗といえば、フィレンツェ県北部のムジェッロ地方とシエナ県とグロッセート県をまたぐトスカーナ第二の山・アミアータ山の栗がIGP(保護指定地域表示)が有名で、この地域でも多くの祭りが開催されています。今日はそのうち、アミアータ山で行われる栗祭りとその村を紹介します。
2024年7月10日のメルマガでも紹介したサンタ・フィオーラでは、10月第2・3・4週末と3週末6日間に渡って栗祭りが開催されます。広い旧市街の中でも、祭りの中心となるのは市役所もあるガリバルディ広場。栗や栗製品、職人がデモを行いながら販売する雑貨の市などが並びます。サンタ・フォーラのシンボルで、坂を下った所にあるペスキエラ公園でも栗の販売があり、その横の栗林で行われる栗拾いイベントは家族連れを中心に人気があります。サンタ・フィオーラまで来たら、ミシュランガイドにも紹介された1927年創業の老舗のレストラン「イル・バリオット」でぜひ食事を。栗ペーストとリコッタチーズの具を栗粉の生地を包んだ栗のラヴィオリが看板料理で、デリケートなポルチーニソース、栗の甘みとのコントラストが楽しめる猪ソースの二種類から選べるようになっています。
シエナ県側の中心的な村、アッバディア・サン・サルヴァトーレでは第2・3週末(金・土・日)の6日間に渡り、Festa d’Autunno(秋祭り)が開催されます。地元の農家や食料品会社による市や食事もできるスタンド、音楽イベント、森トレッキングなどが行われますが、その中心はやはり名産品である栗です。中世の面影を色濃く残す旧市街は栗の枝葉などで飾り付けが施され、一角では焼き栗のロースターを回している姿も。ただ栗を食べるだけでなく、童話の世界のような旧市街をゆるりと散策するのが楽しいです。
こちらは規模は小さいですが、他と異なるのは栗以外にもこの村で採れたポルチーニを生・乾燥・ソースなどに加工した商品が販売されていること。また祭りの名にもなっているように、アミアータ山で採れるきのこの解説つき展示も行われています。そしてクライマックスは第三日曜の午後に行われる「木こりのパリオ」。村の2つの地区対抗の丸太切り競技で、その速さだけでなく、指定されたサイズになっているかどうかの正確さも加味してポイントがつけられ、勝負が決まります。ここは私の姑の故郷のためにかつては毎年のように訪れていましたが、昔は村民と周辺からしか人はやってきませんでした。世界遺産であるオルチャ渓谷エリアであるということ、近年は村をあげて観光プロモーションに力を入れていることもあり、フィレンツェなどの遠方から人がやって来たり地方ニュースに取り上げられるなど、メジャーなイベントになりつつあります。
国内外で観光客に人気のトスカーナ州ですが、アミアータ山エリアはまだまだ認知度が低いエリア。栗祭りを訪問がてら、このエリアの魅力に触れる滞在を楽しんでくださいね。
文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。イタリアの美しい村30村を紹介した「イタリアの美しい村を歩く」を東海教育研究所より出版。