丘の上の城塞の村、コルチャーノ

コルチャーノは、「イタリアの最も美しい村」協会にも加盟しているペルージャ近郊の村。州都ペルージャと前回に紹介したパッシニャーノがあるトラジメーノ湖の間にあり、標高408mの丘の上にひっそりとたたずんでいます。ペルージャから車で行けばたったの15分なのに、公共交通機関を使うとバスを乗り継いで1時間近くかかってしまう行きにくい村ではありますが、アッシジやスペッロのようなペルージャ県にある他の美しい村と同様に、明るい石造りの村を散策するとまるで童話の世界に紛れ込んだようです。

コルチャーノはギリシャ神話に人物ウリッセの仲間コルジャーノよって作られた、という伝説もありますが、実際の村の記録は1000年頃にさかのぼります。1136年にはペルージャ司教の統治下に、それから外国人軍隊からの略奪と包囲、それからの解放が行われ、1482年には防衛強化のためのサンタ・マリアの司令塔が建設され、それは今も村の入口に。村のシンボルにもなっています。

もう1つの村のシンボルは、ペルージャが輩出した偉大なルネサンス期の画家・ペルジーノによる1513年作「聖母被昇天」の祭壇画です。サンタ・マリア門を入ってすぐ右にある、サンタ・マリア・アッスンタ教会に展示されています。元々は13世紀建設のゴシック様式の教会でしたが、1870年に現在見られる新古典様式に建て替えられました。内白を基調にしたシンプルな内部に、照明があてられた祭壇画は浮かび上がるように見え、入った瞬間から吸い込まれるようです。

教会は他にも、1223年にトラジメーノ湖のマッジョーレ島から聖フランチェスコがこの地に降り立ったことから建設されたと言われるサン・フランチェスコ教会、旧市街から少し離れたかつての修道院・サンタゴスティーノ教会があります。

教会以外の見どころは、小さな旧市街に残る歴史的な建物の数々です。現在は市役所となっているのは、16世紀半ばに建設のデッラ・コルニア大公の館。親戚であるジュリオ3世が教皇に即位してから、このエリアに数多く建てられた一家のレジデンスの一つです。

市役所があるカルディナーレ・ロテッリ通りには、その他にも15世紀建設のカピターノ・デル・ポーポロ(市民隊長)の館が、そしてその前から出ているジローネ通りには、この村出身の芸術家ジュゼッペ・マニー二の博物館など、美しい建物が点在しています。

私が訪れた時にはちょうどお昼時で、ジュゼッペ・マニー二の博物館や農家博物館、サンタ・マリアの塔や旧市街外すぐの観光案内所併設のエトルリア博物館も昼休みで訪問は叶いませんでしたが、これだけ小さな村にあって見どころはたくさん。観光客は少なく、そのおかげで民家の窓から料理をする音が聞こえてきたり、洗濯ものがはためいていたり、犬の散歩をしていたり、住民の営みが感じられる素朴な村です。

公共交通機関で行くのは大変ですが、ペルージャからならタクシーで行っても15分程度。ペルージャ観光の前後に、ぜひ立ち寄ってみてください。


文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。イタリアの美しい村30村を紹介した「イタリアの美しい村を歩く」を東海教育研究所より出版。