
アレッツォ深堀り②アンティーク市
前回の映画「La vita e’ bella(ライフ・イズ・ビューティフル)」の他にも、アレッツォと聞いて頭に浮かぶもののひとつがアティーク市です。それもそのはず、その始まりは1968年と60年ちかく前、イタリアで最古で最大のもの。ロンドンのポルトベッロやパリの蚤の市などに感銘を受けていたアレッツォ出身のアンティーク商のイヴァン・ブルスキの発案で、第一回目が共和国記念日の祝日である1968年6月2日に開催されました。イヴァンは兄とフィレンツェでアートギャラリーを営んでいましたが、1956年に母の死去をきっかけに、現在はイヴァン・ブルスキ・ミュージアムなっている代々伝わる館を修復し、アレッツォに戻ってきました。そこが文化的な交流が行われる「ホ―ム・ミュージアム」となるいっぽう、1958年にはアレッツォのサン・フランチェスコ広場アンティーク店を開店します。それから数々の旅のなかでアイディアを得てアンティーク市の第一回目を開催した後も、様々なイベントやプロモーションに尽力し、政治家や芸能人なども訪れるアレッツォを代表する国際的行事に成長。1968年の初回から今まで、空白の期間を
設けることなく継続して開催されています。
アンティーク市の中心はグランデ広場。飲食店が並ぶ北側の柱廊下にも所せましと市が並び、いつもは大きな空間である広場は商品と人で埋め尽くされます。市が並ぶのはグランデ広場だけでなく、駅から数分の町のメインストリート、コルソ・イタリア(イタリア通り)から、町の高みにあるドゥオモ広場で旧市街のほぼ全域。出展者数は400にまでのぼります。
市にでる商品はタンスやソファーなどの大型ものから食器やポストカードのような小さなものまで、ジュエリーや時計、本やリネン、また今はコレクションして人気のあるアイロンどの古い器具、おもちゃなど、これも売り物なの?と思うようなものまで勢ぞろい。出展者や買う物、買う数にもよりますが、値段交渉も可能です。プロのアンティークショップなども買い付けに作るため、良いものを探したり値段交渉したりするのは骨を折るかもしれませんが、その過程がまた楽しいもの。見るだけでも楽しいですが、気に入ったものがあればぜひお家に持ち帰ってください。
アンティーク市の開催は毎月第一日曜日とその前日の土曜日の二日間。この市によく買い付けに来る日本の骨董品店の方によると、同じようなプロの業者は土曜日の午前中に集中するらしいので、特別なお目当てがなく見るのがメインの方は土曜午後か日曜に訪れるのが良いでしょう。またアレッツォの伝統行事である「サラセン人の馬上槍試合」が同じく第一日曜に開催される9月は、グランデ広場ではなくドゥオモ後ろ側にある大きな公園・Pratoで市が立つそうですので、ご注意を。
60年近い時を経ても色褪せず、アレッツォの顔ともなったアンティーク市。アレッツォはフィレンツェから直通電車で1時間ちょっとなので、開催期間にフィレンツェや近郊に滞在予定の方は、ぜひ予定に組み込んでみて下さい。
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。著書に「イタリアの美しい村を歩く」、「イタリア流。世界一、人生を楽しそうに生きている人たちの流儀」など。