イタリア 2006年買い付け旅行記10 イタリア食材専門通販ショップ ベリッシモ
Business Diary

イタリア買付け旅行記(2006年初夏 6月4日〜6月22日 16泊18日の旅)

6月13日(火) 新しいシャッカのアンチョヴィ
 パレルモには二泊します。
 今回宿泊したホテルは、中央駅から歩いて5分(実際は7-8分)の
 ★★ホテルで、その名も「Hotel Sicilia」。
 えっらそーな名前と看板の割りには、建物は古くて
 内部はまるで迷路のよう。若い人向けの手軽なホテルという
 イメージです。

 コラツィオーネ(朝食)の部屋も、凝ったレースのテーブルクロスが
 使われていたりして、インテリアはちょっと乙女チック。
 それなのに、自分にあてがわれた部屋にたどり着くには、
 階段を2フロア分くらい降りなければならなかったり
 かなり体力を必要としました。

 その代わり、朝食に出てきたセサモ(ゴマ)のパンは
 さすがシチリア!モチモチとしていて、小麦の甘さが感じられ
 とっても美味なのです。これは許せるなあ。。。


 朝食後、約束の時間まで少しあったので、
 ホテルの周りを散策しようか・・・と思い、外に出たところ。
 なんと約束相手がちょうど、クルマに乗って私のホテルを
 探しながら徐行運転しているところに出くわしました。

 相手も、約束相手だとわかり、スグに声を掛けてきます。
 フィレンツェと違って、パレルモでは東洋人はあまり
 見かけないものね。

 クルマに早速乗り込み、スグに出発だ!
 目指すのはアンチョヴィの故郷。あの海辺の町・シャッカです。

 美味しいアンチョヴィを探しているのか?
 なら、シャッカを訪ねるといいよ。
 シャッカは紀元前から、アンチョヴィ作りのメッカだから。

 イタリア人にそういわれて、訪ねたのは今から3年前の夏。
 そのときの模様はコチラです。
 http://www.bellissimo.jp/bellissimo/diary/2003vol9.html
 アンチョヴィが、こんなにも美味しい素材なのだということを
 私は生まれて初めて気がつきました。

 発売したシャッカのアンチョヴィはすぐに評判になり、
 やがて雑誌「四季の味」編集部の目に留まりました。
 当時、渋谷にあったベリッシモの事務所に
 何度も訪ねてこられた担当者はシャッカのアンチョヴィに惚れ、
 数回に渡って、この製品を何本も購入されたのです。

 美味いものを探求するのが大好きな編集部では、
 酒の肴としてはもちろんお茶漬けの具に至るまで、
 アンチョヴィをたくさん使ったレシピを開発してくれました。
 そう。シャッカのアンチョヴィには、イワシが持つグルタミン酸が
 たっぷりと閉じ込められていて、酒好きには答えられんのです。
 いわば「酒盗」のような珍味として彼らは捕らえたのでしょう。


 発売された「四季の味 夏号」では
 10ページに渡って和風・洋風とりまぜたアンチョヴィのレシピと
 ベリッシモの電話番号が掲載されました。

 出版から2年以上経過した今でも、
 「四季の味を見たんですが・・・」と問い合わせの電話が来ます。
 それほど人気を誇ったシャッカのアンチョヴィでしたが、
 なんと残念なことに昨年からメーカーが操業を停止。
 あの素晴らしいアンチョヴィが手に入らなくなっていたのです。


 これは、スグに代わりの製品を探し出さねば!!


 今回の二つ目のタスク。それがこのシャッカのアンチョヴィです。
 気合を入れて、メーカーを二社ピックアップしました。
 二つとも、以前東京のFOODEXで来日したメーカー。
 工場を見学して、どちらかに決めようと思っています。


 ホテルにピックアップしに来てくれたのはT社という
 シャッカでも大きな工場を持ち成功している企業です。
 びゅんびゅん飛ばすクルマの中で、話を聞いてみました。
 昨日電話したときと違って、迎えにきた男は英語が流暢。

 聞けば現在、業務拡張のためシャッカの対岸(アフリカ大陸)で
 工場を建設中とか。その理由はイタリア国内の人件費の高騰。
 維持費のかからないチュニジアなら、アンチョヴィをさばく
 パートの女性の賃金ははるかに安くすむのです。
 管理さえきちんとしていれば、という条件つきですが・・・・

 また、原料となるイワシもシャッカとアフリカ大陸の間の海峡で
 採れるものなので、水揚げ場所をシャッカにしても
 チュニジアにしても、同じ事だと彼は言います。


 でも、それじゃあシャッカのアンチョヴィじゃないんじゃないの???


 パレルモから事務所まで約1時間のスリリングなドライブ。
 スリリング、というのは途中、マフィア発祥の地とされる
 コルネリアーノ村近くを通るからです。
 おおっコワ!まさか爆弾でドカーン!なんて・・・。
 んなワケないすけどね〜(たぶん)。

 だだっ広い敷地の中に、工場がポツンと建っていました。
 周囲は何もナシ!岩肌むき出しの丘と舗装されていない道路のみ。
 荒野の中の建物という趣きです。

 早速、工場の中を見学しました。静かです。
 ちょうど時間も昼前で、女性たちが忙しく手を動かしていました。
 トレーに大量に積み重ねられた、塩抜きのアンチョヴィ。
 ただ、見た目だけではなんともいいようがありません。

 事務所で、製品を試食することにしました。

 瓶の封を開けてお皿に出されたアンチョヴィたち。
 あれ?ちょっと生臭い感じがします。
 オイルがよくないのか・・・?理由は定かで無いけれど、
 これは以前扱っていたあのアンチョヴィと比べると
 「格下」だと直感しました。残念!

 迎えに来てくれた彼には悪いけど、
 次のメーカーと比較して、答えを出す事にしよう。
 と、心の中で思いました。


 昼時なので、その後シャッカの海辺に出かけ、
 軽い昼食を共にしました。
 6月に入り気温も上がってきたので、ちょうど海開き!
 すでに浜辺にはビーチパラソルとビーチベッドがお揃いで
 並べられ、客が来るのを待っていました。

 浜茶屋で食事をしながら、迎えに来てくれた彼から質問。
 「ぶっちゃけた話、ウチの製品のこと、どう思う?」

 おっ。来たな!

 ワタシの顔色を伺って、彼もなんとなく予感していたのでしょう。
 きっぱりと答えてあげました。
 「うーん。正直、今ひとつだね。よくある味で、感動しない。」

 歯に絹を着せる日本流は、海外では通用しません。
 ハッキリと伝えるべきことは伝えてあげないと、
 変な期待を持たせてしまいます。
 ビジネスはビジネスだから。

 あとで聞いた話ですが、この大手メーカーは、
 アルゼンチンからイワシを輸入してアンチョヴィを製造し
 アメリカ向けに輸出して商売しているという噂でした。

 ランチのあと港へ行き、午後の水揚げ現場を見学しました。
 ここシャッカの水揚げ場所は、ちょうど町の真ん中の船着場。
 といっても、セリなど行われるような建物があるわけでなく、
 取引は直接、仲買人と船との間で行われるのです。

 岸壁には、仲買人のミニトラック(三輪車)が列を成して
 船の到着をひたすら待っています。
 次々に港に入ってくる船たち。。。
 船が到着すれば、一斉に仲買人たちは船の前に陣取ります。

 そこへ、採れたばかりの新鮮な魚介類たちが 
 種類別にそれぞれ発泡スチロールの箱に詰められて
 船の奥からどんどん運び出されてきました。
 取引が成立すると、即座に箱は三輪車の荷台へ。
 きっとそのまま、レストランなどに運ばれていくのでしょう。

 なんとも原始的というか、直接的なやりとりで
 新鮮な魚たちはどんどんその場から消えてなくなっていきました。


 次に訪ねたメーカーは、シャッカで創業し親子で経営している
 会社「SCALIA社」。電話でやりとりをした結果、
 指定した場所に迎えに来てくれる事になりました。
 さっきまで案内してくれたT社の彼とはここでお別れです。

 30分ほど、さきほどの港を見下ろす高台の公園で待ちます。
 ほどなく、息子で副社長のバルドが迎えに来てくれました。
 シャッカの中心からクルマで20分ほど。目指す工場に到着です。


 午前中に訪ねた工場と比べると、規模は明らかに小さいけど、
 中では従業員が忙しそうに動き回っています。
 ここで、アンチョヴィの製造方法を彼らから聞いたので、
 おさらいしておきましょう。

 まず、イワシの旬ですが、日本と同じで春です。
 シャッカ沖で採れるイワシは大きなものから小さいサイズまで
 形も様々。大きさによって用途が異なります。
 (途中まで、製造工程は一緒)

 旬の魚を早朝に水揚げ。
 旬の時期は朝5時頃から仕事を開始するようです。
 なぜなら、痛みやすい魚はその日の昼までに処理をしないと
 いけないから。時間の勝負なのです。

 まずイワシは海水と同じ濃度の塩水にさらされ、
 定期的に水が替えられます。まずは頭と内臓を取り去り血抜き。
 それを直径25センチ・深さ10センチほどの丸い缶にきれいに
 並べていきます。缶の中、1段目を並べ終えたら、
 大量の海塩を投入します。交互にこの作業を繰り返し、
 缶は次第に魚と塩で満杯になっていきます。
 これが、「塩漬けのアンチョヴィ」です。

 缶は崩れないように積み重ねられ、最後は直径2メートル・
 高さ2.5メートルほどの「缶のタワー」状態になります。
 てっぺんには重しをかけられ、すぐさま熟成が開始します。
 室内の温度はきっちり管理されます。

 熟成期間は、熟成度合いによるけれど、だいたい6ヶ月(!)。
 放置された状態で魚から余分な水分が染み出てきます。
 この過程で、イワシの持つ旨み成分がどんどん凝縮されて
 いくわけです。塩蔵手法は、日本と同じですね。

 熟成期間が終了すると、すでに魚はぺったんこになっています。
 普通はこの状態で、缶にフタをされて出荷されるのです。
 この時点では、塩抜きをしたりオリーヴオイルに漬けたりしないと
 食したりすることはできません。主にレストランなどでは
 大きめのサイズのものがアンティパストとして供されます。
 小さいサイズのものは、ピッツァのトッピングに使われたりします。

 もしもこのような塩漬けの缶製品を購入したなら・・・
 一般家庭で使う場合は、まず流水で塩を洗い流して抜きしたあと、
 好みのオリーヴオイルに漬け込んでおくとよいでしょう。
 その後マリネなどすれば、小皿料理の完成です。

 ベリッシモが扱うアンチョヴィは、オリーブオイルに漬けるという
 工程をメーカーが施してくれたもののみになります。
 ここからはその製品工程。


 塩蔵のアンチョヴィは塩を抜かなければいけないのと、
 まだ小骨が身に残ったままなので、これを取り除く必要があります。
 アンチョヴィの小骨は意外と細くて小さく、機械で取り除くというのは
 少々難しいのです。まして6ヶ月の塩蔵でぺったんこですから。

 そこで、パートの女性陣の出番!

 まずアンチョヴィは遠心分離機で塩分と水分を抜かれます。
 その後、手作業で三枚におろしてフィレにしていきます。
 じっと見ていると、慣れた手つきでどんどんさばいていきます。
 そして、試しにいただいたフィレはまったく小骨もなくスムーズ!
 指先で感じるほんの少しの違和感さえもカンペキに取り除かれ、
 こうして極上のアンチョヴィに仕上がっていくのです。

 ちなみにこの段階で使用されるアンチョヴィはどれも小さく、
 長さにして10センチ未満のものばかり。
 コレがまた、美味しいんだなあ!ちょうど、寿司のコハダと
 同じですよ。小さい「しんこ」のほうが美味しいじゃないですか!

 手作業で綺麗に整えられたフィレは、
 今度はオリーブオイル漬けという過程を迎えます。
 使われるオリーブオイルはもちろん、地元アグリジェント県の
 EXVオリーブオイル。

 アグリジェントといえば神殿で有名ですが、
 もう一つ、アーモンドでも有名なのです。そしてここで採れる
 オリーブオイルは、とってもアーモンドの味がします。
 濾過していない濃いグリーン色のオイルに1週間ほどディップ!

 6ヶ月の塩蔵とその後のお掃除によりすっかり引き締まった
 赤い身に、アーモンドの香りがするオリーブオイルが染み込む・・・。



 美味しくないワケがないっっっっ!!!!!



 果たして、オリーブオイルたっぷりのバケツに漬け込まれた
 アンチョヴィをつまみ食いさせていただくと・・・。



 アンチョヴィ・エキスたっぷり!!
 そして、もちろん、生臭くない!!!(コレ、ポイントです)



 メーカー倒産という予測だにしなかった事態を目にして
 「どうしようアンチョヴィ!!??」
 と悩んでいた回答が、ようやく得られたようです。

 さらに、アンチョヴィをペースト状態に加工して
 料理に使いやすいようにした製品も、見事なエッセンスに
 仕上がっていました。使う量はほんのわずかでOKです!
 やるじゃんSCALIA社。

 気の遠くなるような手作業と文字通り手塩にかけたアンチョヴィ!
 これならば、ベリッシモが選び抜いたアンチョヴィとして
 太鼓判を押す事ができます!
 長い空白期間を経て、ようやくまためぐり合うことができました。


 極上アンチョヴィ再発見の、記念すべき1日でした!


 ちなみに、オリーブオイル漬けアンチョヴィ、それにペースト
 ともに「冷暗所保存」してくださいね。冷蔵とはいいません。
 その理由のひとつは、使われているオイルが、気温が高くなると
 膨張して容積が増え、瓶から漏れ出ることがあるからです。

 通常、トマトソースなどの瓶詰め製品は最終段階で煮沸消毒
 されます。そうすると瓶の中が真空状態になるため、
 中身が漏れ出るということはありえず、仮にあったとしたら
 不良品(中に空気が入っている)の可能性があります。

 しかしこの製品の場合、煮沸消毒をしません。
 従って、フタをしてあったとしても中は真空状態ではないため、
 オイルが膨張して染み出る事は十分ありえるのです。

 ベリッシモでは、商品輸入と倉庫保存は15℃で管理します。
 また、配送時にクール宅急便でお届けすることによって、
 オイル漏れを未然に防ぐようにしております。
 安心して、現地の味を楽しんでくださいね!


 (ベリッシモ店長・清水)
↑二泊したパレルモの★★ホテル「Hotel Sicilia」。フロントは階段を上がった二階にありエレベーターないです↓
↑アンチョヴィさばきは基本的にほぼ100%手作業です↓
↓T社の周辺環境。シチーリアー!
↓シャッカの海水浴場です
↑シャッカの港では、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類が取引されます↓
↑その日のうちに食べる!のが美味しいですよね。当然↓
↑シャッカの町を港から見上げる↓シャッカの港を高台から見下ろす。対岸はチュジニアです
↑小さな身が三枚におろされて、どんどん見事なフィレが作られていきます↓
↑そろそろ瓶詰めを迎えた完成品を、ちょっとツマミ食い!極上です↓
↓6ヶ月間、この状態で塩蔵されます
↓SCALIAオーナー創業者。今でも現場の一線で陣頭指揮を執る姿は立派!
↓アンチョヴィを漬け込む大量の海塩はトラパニの塩田のもの。
↓営業担当のBALDO。創業者の息子です
↓ベリッシモが日本で独占販売することになったアンチョヴィ製品たち
↓仕事を終えて充実した気分でパレルモに戻ります
↑夜9時、パレルモ到着!あたりはそろそろ夜の帳が下りてきました↓
↑駅のスグ横にあるトラットリア「ENZO」で夕食。庶民的な値段だけど、ウマイ↓

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